「金融の基本とカラクリがよ~くわかる本[第3版]」
「金融の基本とカラクリがよ~くわかる本[第3版]」
久保田博幸 秀和システム
仕事でカード業の知識が必要となり、まずは金融に関する基礎知識を得ようと思い読んでみました。内容としては、著者が「はじめに」に書かれているように、学問としての金融を知るための本ではなく、金融機関や金融商品が売買されている場の仕組みに関して基礎的なことを説明したものです。最初から理論的、抽象的な金融論などの教科書を読むより、まずは具体的な仕組みを押さえてから理論的な本を読むほうが、私にはしっくりきます。
この本をお勧めする読者は、金融に興味がなかったが仕事で必要になった方、それから投資に興味をもったが本や新聞に書かれていることがわからず、金融の基礎知識を身に着けようという方です。私がまさにそうです(笑)。
具体的に内容をみていくと、株式、債券、通貨、為替、日銀、政府などについて、バランスよく、広く浅く説明する形です。説明を行うテーマに関して図や表もつけられていますが、それほど理解を助けてくれるわけではなく、どちらかというと文章を読んで理解していく本といえます。しかし、文章もわかりやすいので特に問題はないと思います。経済・金融系の本はそんなものかもしれません。
例えば、外国為替市場についてですが、私はずっと東京やニューヨークには外国為替取引所があるものだと思っていました。ところが、証券取引所のように一か所に集まって取引をして価格を決定するのではないそうです。貿易や国際的な取引活動により発生する国境をまたぐ資金移動を銀行が仲介して行っています。銀行は短資会社という仲介業者を通してだったり、直接相手方の銀行と取引を行います。この取引は、銀行内のディーリング・ルームで電話やコンピュータを使って行われており、この取引と取引をつなぐネットワークをまとめて外国為替市場と呼んでいるそうです。知らないということは怖いことです。
ただし、この本を読むには、以下の点に気を付ける必要があります。おそらく、この本は始めから順番に書かれたわけではなく、章ごとにバラバラに書かれたものと思われます。本を読み進むと何の説明もなく新しい単語が使われていたりします。私も日銀の章(前のほうの章です)を読んでいて、いきなり何の説明もなく、「イールド・カーブ」とか「コール・レート」という言葉がでてきた時には、この本は今の自分には難しすぎるのかなと不安になりました。ですが、読み進めると後の章できちんと説明してくれるのでご安心ください。初めて出てくる単語は基本的にはそこで説明するべきとは思いますが、説明しやすい場所はあるわけで、そこで説明するという方針なのでしょう。文字数に制限があるこのような本では、いたしかたがないかと。索引もついていますので、気になった方はそこから説明されている箇所を探して読めば問題ないレベルと思います。
それから、金融デリバティブについては、今ひとつわかりづらかったです。デリバティブは複雑な仕組みであるため少ない字数で説明するのは難しいのだと思います。やはり、きちんと理解するためには、デリバティブに特化した本を読む必要があるのだと思います。
次に、この著者の紹介です。
証券会社の債権部で債権のディーリング業務に従事してこられた方で、幸田真音さんのベストセラー小説「日本国債」(私は未読です)の登場人物のモデルとなった方らしいです。それから金融関係の本を書くような方は、個人に対して、無批判に投資を進める傾向があるように感じていました。しかし、著者はデリバティブの取引に関して、金融のプロにおけるリスクのヘッジについては評価しているものの、個人投資家が手を出す際にはリスクを覚悟することをアドバイスするなど、信用できる方なのかなと思います。
最後に、この本1冊で金融の知識をすべて得ることはできませんが、まず初めの一歩として金融の基礎知識を身に着けるには、ちょうどいい本なのかなと思います。
参考までに、目次を掲載します。
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