飼い主さんの乱読日記

趣味、勉強のために読んだ本の感想とも言えないものを書き連ねています

『国際金融入門[新盤]』

『国際金融入門[新盤]』

岩田規久男 岩波新書

 

『金融入門』に引き続き、岩田さんの『国際金融入門』を読んでみました。書きっぷりに関しては、『金融入門』と同じく、簡潔な記述で、かつ大学の授業を受けているような印象を受けます。しかし、無味乾燥かというとそんなこともなく、素っ気ないけれども必要なことはきちんと伝えてくれています。書かれているレベルについては、私では正確な判断ができませんが、はしがきで著者が述べているように、「国際金融の専門家を目指すのでない限り、国際金融の仕組みについては、本書程度の原理的なことを理解しておけば十分」であるようです。また、それをふまえて、「国際金融の[理論]、[仕組み・制度]、[歴史]をバランスよく組み合わせたつもり」と言っているように、どこかの分野に偏った記述ではなかったと思います。

 

ここから、私の感想主体に書かせていただきます。私は基本的に、通勤時にこの本を読んでいたのですが、その読み方ですと、[仕組み・制度]、[歴史]部分は理解できるのですが、[理論]に関しては一度読んだだけでは、理解しきれないところも多々ありました。この本のようにコンパクトにまとめられた本では、1つの文章ごとに意味が凝縮されているため、そこをきちんと理解するためには、腰を据えて読まないといけないのかなあと思います。ノートをとりながら読むくらいのスタンスが丁度いいのかもしれません。(もちろん、頭の良い方は別ですよ(笑))

 

次に、この本の中で、特に興味をひかれた部分について書かせていただきます。ヘッジ・ファンドによるポンドの空売りや、ヘッジ・ファンドが引き起こしたアジア通貨危機に関してですが、その仕組みについては、細野真宏さんの『経済のニュースがよくわかる本[世界経済編]』でも書かせていただきましたが、ヘッジ・ファンド悪玉論的な言説が主流であると思います。自分が儲けるために、他国の経済をズタボロにしてしまうってどうなの?っていうのが、おそらく普通の人の感覚だと思います。それに対して著者は、上記のイギリスやアジア諸国は経済の論理を無視した制度を無理して維持しようとしていたのであり(経済の論理に対する対抗勢力)、ヘッジ・ファンドはそういった無理はいつまでも続くはずがないと判断し、経済のファンダメンタルズに基づいた投機を行うことにより、そういった抵抗勢力に打ち勝ったと評価しています。冷徹な「経済原理至上主義者」であるような主張です。個人的には賛同しかねるという気もしますが、現実の経済の現場はそのようにシビアなものなのかもしれません。いつその攻撃対象が日本になるかわからないことを考えると、未来の日本への箴言として受け止める必要があるのかもしれません。